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~二日目早朝イベント~
私たちは朝7時に朝食を済ませた。
次の団体客の関係で朝早くに宿を出ないといけないことは予約の時点で聞いていたので問題はない。ねぼけた頭でおじいさんの話を聞いていると、早く宿を出てもらう代わりに目的の場所まで車で連れて行ってくれるらしい。
昨日あやふやに聞いていたおじいちゃんのプランに若干の不安を抱えるものの、出るまでに時間がなく準備をばたばたと済ませ、私たちは言われるがまま車に乗り込んだ。
「着いたで~」
わたしたちが車から降ろされたのは、長い階段が目の前に続く山の麓だった。
「この山登ったらお寺があるけえな!山降りたら自転車借りるところまで行けるよ!いってらっしゃーい!」
そう言って車は去っていった。
午前8時。強制山登りイベント発生。
なぜ?
どこまでいってもその二文字は頭から消えることはないが、ここまでくると逆に面白くなってくる。ジジイに朝から知らない土地の山の麓に降ろされる経験をしたことがないからだ。
頂上に上り、強制イベントを達成した。なんやかんや言ったが朝から運動したのは久しぶりで、汗をかいた体に冬の朝の冷たい風が流れてきて心地よかった。とんでもないめにあわされたと思ったが、案外言うとおりにしていてよかったのかもしれなかった。
~村人Aのヒント~
山をおりて当初の目的どおりしまなみ海道をサイクリングし、そしておじいちゃんが言っていた大山祇神社に行くことになった。
パワースポットと名高い大山祇神社だけあって、言葉にできないすごみのようなものを場所から感じた。私たちは参拝を済ませたうえで、ある場所を探していた。手掛かりは前日の夕飯時に聞いたおじいちゃんの言葉のみだった。
「大山祇神社の奥をしばらく歩いて行きょうたら、大きな木の中に階段がある。それをくぐった先にある院を参拝したら安産祈願になるけえ絶対にいってき!!」
RPGの村人に聞いたみたいなヒントみたいだった。もはや大山祇神社よりもその院の存在のほうが気になっていた。RPGといえど、勇者たちは武器も魔法も持っていない。あるのは民宿を出るときにおばあちゃんに渡されたみかんのみ。
何回か奥にそれらしき建物は見つけたが、どれも「樹の中の階段」という条件にあてはまっているのかは微妙なところで、納得がいくまで本物の院を探そうとふんばった。
一度はアイテムのみかんを手放し、あきらめようとした。みかんは静かに私たちを見つめる。やっぱりこの世はRPGじゃない・・・。桃太郎伝説みたいにうまくはいかないんだ・・・(私が唯一プレイしたことのあるRPG)
脚も疲れ、諦めかけたその時!
歩いていた先に「この先〇㌔」という看板を見つけた。
まさか・・・いやまさかな・・・・。私たちはその看板の示す道のりを歩いた。
!?!?
あった!!!!!!
樹の中に階段~~~~~!!!!!!!
何度もジジイのでまかせだったと疑い続けた
そんな疑いの先にあったその階段に、私たちの盛り上がりは最高潮になった。
どうやらその木は「生樹の御門」と呼ばれ、樹齢三千年を超える巨樹らしい。まさにその門をくぐったその先が「大山祇神社奥の院」なのだ。おじいちゃんの言っていることは正しかったし、その樹のたたずまいは本当に圧巻だった。
ただ奥の院自体は、老朽化がすすんだ小さな小屋で「本当にこれなのか!?」と正直疑った。おじいちゃんが言っていた通りに私たちはそれぞれの安産を祈願したのだった。
奥の院の前のあたりにあった瓶。仙人が飲んでそうな酒だ。ホントにここに住んでるのかもしれない。
そこにボスキャラはいなかったが、代わりに仙人がいた残り香を感じ、勇者たちは帰路についた。
~救世主の言葉たち~
予定をすべて終え、私たちは自転車をレンタル屋に返した。
そこからの帰り道は友達ふたりとは逆方向だった。友達は近くの港に行けばフェリーに乗れるものの、わたしは高速道路の中にあるバスストップまで行かないと目的の高速バスに乗れなかった。そこにはタクシーで行くしかなく、距離もあるのでそこそこお金がかかる。無計画に遊んでいたので帰り方をよく調べていなかった私が悪い。
「仕方ないねー」と少しだけしゅんとする空気。
バスに乗れなかったら大変なので、急いでタクシーを探そうと思っていたその時・・・
おじいちゃん!!!
民宿のおじいちゃんにこのタイミングで遭遇したのだった。この島唯一のパチンコ屋に行っていた帰りらしい。思わぬ伏線を回収してしまった。
私はおじいちゃんにバス乗り場まで行くためにタクシーに乗りたいという旨を伝えた。
すると
「バス乗り場まで車出してあげるわ!ここでまっとき!!」
と言い、おじいちゃんは自転車に乗って民宿に帰っていった。
なんてあったかいんだ!救世主だ!
まさかの再会に胸を躍らし、優しい言葉に温まり、昨日会ったばかりなのに、なんだか本当に自分のおじいちゃんみたいな感覚がしていた。
おじいちゃんは本当に車で迎えに来てくれて、友人二人を港まで送り、私をバス乗り場まで送っていってくれた。
バス乗り場に早めにつくと、バスが渋滞で遅れていることを知った。私はおじいちゃんに感謝を伝えて待合室で待とうとすると、おじいちゃんは「一緒に待ってやろう」と温かいコーヒーを買ってわたしにくれた。
スマホがあるので時間の潰し方なんていくらでもあるのだけれど、若い娘が一人でバスを待つのがしのびなかったのだろう。おじいちゃんはバスがくるまで本当にずっと一緒に待ってくれた。
夕飯の時と同じぺースでずっと話すもんだから、白目になったりはした。
でもよくよく考えると、あの民宿に若い人が泊まったのは久しぶりだったのかもしれない。島全体に若い人が減り、観光客も減少することによって民宿の利用客も減っているとおじいちゃんは言っていた。島の商店街は活気をなくし、昼間もシャッターを閉めている店が多かった。
おじいちゃんは私に話をしているとき本当に楽しそうだったし、私もなんだかんだいって楽しかった。話をきくのは結構大変だったけど、おじいちゃんの楽しそうな笑顔は見ていてなんだか嬉しかった。
冷たい椅子が体を冷やしたが、手の中のコーヒーはいつまでも温かくわたしをあたためていたのだった。
思い付きの旅行に、とんでもなく楽しい思い出たちをくれた救世主のおじいちゃんの言葉ひとつひとつを、私は忘れることはないのだろう。
最後に
おじいちゃんがした話を思い出せる範囲でとったメモが出てきたので、それを貼り付けて終わりにしたいと思います。
今回一番伝えたかったことはこれです。
みんなも田舎の民宿に泊まりに行ってみよう。