ありがとう笑ってくれて

エッセイ
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ポテチを食べると鬱になる。

 

もう年が明けて一か月がたとうとしている。時の流れの速さに圧倒されるばかりである。一年の抱負を特に決めることもなく
アフォヅラかまして呼吸していたらもうこんな時間が経っていた。それを実感したのは今年に入ったちょうどその日。そう元旦だった。一年の幕開けの日から、今年のアフォヅラアワードに匹敵する緩み切った顔をしていた。何かがあったわけではない。むしろ何もないのだ。ずっと何もないのだ。

今年は仕事も忙しくなく年末の休みも多かったのだが、飲みに出かける予定がほとんどなくずっと家で過ごしていた。「忘年会」と呼べる会が職場の忘年会のみで、同級生と呼ぶべきコミュニティから連絡もこず、スマホ動かぬこと山の如しという感じで引きこもりライフを謳歌していた。
「もしかして:そこそこ友達がいない」と予測変換が出る前に酒を飲んで目に映る物事の輪郭をぼんやりさせて、youtubeで動画を見て早めに寝る日々を送っていた。

そこでやってきた元旦である。だらしのない顔をしている私。もうお分かりだろうか。飽きているのだ。暇という現象に。
少し動いてDTVで気になっていた洋画を見るなどの選択肢もあっただろう。買ったまま開いていなかった本を読んでみるということもできただろう。
しかし、それができていたら暇ではないのだ。休日を有効に使い価値のあるものにできるような人間ならば暇などというものとはそもそも無縁なのだ。

そんなわけでだらしのない顔を見せて幾度目かの昼寝に繰り出そうとしていた時、わたしはあるものが目に入った。
机の上のポテチである。BIGサイズと書いてある。
「ポテチがある。」
事実を声に出してみる。This is a Poteti. 母親が反応する。
「あーそれ後で宴会のとき出そうと思って」
どうやらこれは大人数で食べられることを目的としたポテチであるらしかった。なるほど。うちは親せきが多い。納得のBIGサイズである。ふーんそうですか、これをね。夕飯の後にね。酒でも飲みながらね。いいですね。mee tooですわ。

しばらくすると封を開けられたポテチがそこにあった。
This is aアケラレタポテーチである。英語が苦手なことは十分伝わったと思うので金輪際もう使わないわけだが、誰がポテチをあけたとおもう?そうだね、私だね。私が私の意思で開けたわけだね。

でも、私は別にポテチが食べたかったわけではなかった。元々そこまで間食をするタチではなく、なんならスナック菓子より乾きもののつまみのほうが好きである。ではなぜ開けたのか。暇を持て余した私の指先が、食べたいとする欲求なくしてそれを開けていたのである。
そして私は、その中にあるポテチに手を伸ばしていた。そこからはもう止まることはなかった。
「やめられない止まらない」。これは別の商品のキャッチコピーだが、よくいったものである。
一度に何枚も手に取りそれを口にほおりこんで、ムシャムシャと食べた。目は虚空を見つめていた。特に食べたいと思っているわけではないのに、手は休めることなくまた袋へ向かう。
私の頭の中には無限に広がる宇宙のブラックホールの中に吸い込まれていくポテトチップスが描かれている。銀河の彼方、放物線を描き飛び去って行くうすしお味が見えた時、わたしは「誰かわたしを今すぐ殺してくれ」と願った。

そして正気を取り戻して最初に見た光景は、欠片もなく綺麗に食い尽くされたポテチの袋だった。いつのまにかBIGサイズのポテチを私は完食していたのだった。

 

一瞬で恐ろしい罪悪感に苛まれるとともに、ある一つの結論に達した。

 

「ポテチを食べると鬱になる」

 

そのあとサウナに行ってすっきりした後に、友達にこの鬱ポテチ論を神妙な面持ちで話したら、「なにそれ」って思い切り笑ってもらえた。私は今年もなんとかまだ大丈夫だと思った。

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