ラーメン屋に行ったらエロ漫画に出てくる女の子になっちゃた話

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おばあちゃんが言っていた

『食事の時間は天使が降りてくる。そういう神聖な時間だ。』

 

これは仮面ライダーカブトで主人公天道総司が言った名言だ。

私はこの名言に100%賛成で、食事の際にはそれ相応のマナーや態度が求められると考えている。

そんな私のポリシーは、「食事中に不快な思いをした店には2度といかない」ということである。

食事中に不快になる場面には、汚い、まずい、ラーメンをらぁめんと書くなど色々あるが、中でも一番嫌なのが客の前で他の店員に説教をするという場面だ。

これは、説教をされている店員さんが純粋にかわいそうだし、怒りの感情をコントロールできていない人を見ることが嫌いだからだ。

したがって、客の前で説教や怒鳴る場面を目撃した場合、絶対に行かない。

これは私のポリシー、人生の信条だ。

絶対に、行かない。

絶対に、イかない。

ありゃ?

お、おかしい

絶対にっ・・・!イかなッ!

ッ・・・!?!?

だ、だめぇぇぇ!?!?!?

 

 

 

あれは、一人暮らしを始めて間もないころだった。

当時大学の近くで一人暮らしを始めた私は、家賃、光熱費、その他諸々を捻出することに精一杯だった。そんな中で唯一の楽しみは、2週間に1度大好きなラーメンを食べることだった。いつもは素パスタの醤油がけや、素パスタのポン酢がけなどをうまいうまいと涙ながらに食べていたので、店で食べるラーメンに至っては、脳内ドーパミンでおかしくなっちゃいそうだった。したがって、ラーメン屋選びは後悔しないように必死に吟味した。そんな中、あるラーメン屋に巡り合った。そこは、1杯1100円と相場よりは高めであり、かなりこだわりがありそうなラーメン屋だった。1100円あれば1100日暮らせる自分にとってはだいぶ攻めたチョイスだったと思う。私は厳粛な面持ちで暖簾をくぐった。

 

店は狭く、10席程度のカウンターがあるだけだった。厨房は奥あるらしく、カウンターから見えるところでは、洗い物と料理提供をしているようだった。笑顔が印象的な優しそうな店員さんは席を勧めてくれた。

 

私は、何味のラーメンにしようかとメニューを見た。すると…

 

「おい!!はやく持ってけ!!!」

 

と厨房から怒号が飛んできた。

 

それを聞いた優しそうな店員さんは、慌てて厨房に行きラーメンを笑顔で提供した。

最悪だ。最も嫌いな客の前での怒号がきた。給仕している店員さんは客に動揺を見せまいと笑顔を向けているのが余計苦しい。

私は今すぐにでも店を出てやりたがったが、そんな勇気も持てず適当に注文した。

 

その後も厨房からの怒号は止むことがなく

 

「使えねぇなお前は!」

「死ね!」

 

など、聞くに耐えない暴言に変わっていった。

周りの客達も言いようのない居心地の悪さを現し始めたが、怒鳴られながらも健気に笑顔で接客する店員さんが不健康なコントラストを醸し出していた。

私はその状況がひどく不愉快で2度と来ないと誓った。

そうしていると、忘れかけていたラーメンがやってきた。

 

まだ食べてないけど、もう2度と来ねぇよと思いながら乱暴に麺をすすった。

 

 

 

 

 

うまい・・・・

 

くそっ!うますぎる・・・!!

1100円の値段設定は伊達じゃなく、めちゃくちゃうまかった。

 

しかし私にはポリシーがある!!

客の前で怒鳴るようなやつの店には2度といかないというポリシーが!!

 

しかし…うまいッ!!!!

塩ラーメンはどんな味なのだろうか!!

気になる!!また来たぃッ!!

 

いや、だめ!!

私にはポリシーがっ!!

 

こんなやつのラーメンなんかっ・・・!

なんで私の胃袋は消化の準備を始めちゃってるのぉ!?

こんなやつのラーメンなんか消化したくない!!

 

でも、らめぇぇぇ!!!

このラーメンじゃなきゃだめなのぉぉ!!んほぉぉぉ!!!

 

・・・・・・

・・・

・・

 

名古屋の冬は寒い。

強く乾燥した寒風が頬をかすめた。

しかし、私は寒さを感じなかった。

ラーメン屋へ向かう私の足取りは軽かった。

正の字が刻まれたポイントカードを握りしめて。

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